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Channel: 平御幸(Miyuki.Taira)の鳥瞰図
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平御幸のデッサン講座〜第14回 点と線

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 松本清張の出世作に『点と線』というものがありますが、新聞社でイラストを描いていた氏には、点と線は日常的な概念でした。しかし、一般の人は点と線を意識することは余りありません。

 絵は錯覚で出来ている。これは点と線にも当てはまります。二つの点を離して描くと、観る人は二点間に描いていない線があるように感じられます。脳の補正作用による実に便利な錯覚ですが、花や植物は、この応用の連続で描く事もできるのです。例えば、葉を描く場合は、茎との付け根と葉の先端だけを描けば、途中は何となく描かれているような錯覚に陥ります。花弁も同じです。

 この要領だけで芸大の日本画に入った男を知っていますが、入学させた方も入った方も馬鹿丸出しです。新作のバラの花のデッサン見てください。付け根と先端と中間の三箇所をきっちり抑えてあるでしょう。このように、抜けた部分を意図的に作ることで、空間や立体感や質感が表現できるのです。バカ正直に、上から下まで同じ手数で描いても、観ている方も息苦しくなるだけです。



 点と線にはタブーもあります。「矢印のように尖っている角の先端は、線に接してはならない」というものです。なぜかと言うと、尖った部分が線に接すると、目がそこに釘付けになるからです。新作のバラの絵では、一番上のバラの左下の萼の先端が、左のバラの花弁のラインに接しています。人の目はここに釘付けになるので、二つのバラが離れている感じがなくなるのです。

 このようなタブーはデザインの基本中の基本なのですが、驚いたことにホンダの車(FIT SHUTTLE)にデザインされています。Cピラーの先端がルーフラインに突き刺さっています。これは酷い。デザインのデも知らない素人の仕事です。このデザインに疑問を持ったためか、改変しているサイトまでありました。

 タブーのもう一つに、「並行する線は近接させてはならない」というものがあります。膠着して見えるからです。読者に寝かせた円柱を描かせているのですが、僕が考案した練習方法で、影と陰の部分にグラデーションをプリントした紙を貼り付けろと指示しました。円柱の一番暗くなる部分と、床の陰の部分です。

 しかし、何を勘違いしたのか、影の中のグラデーションを寝かせた円柱の稜線と重なるようにしてあります。どこから稜線でどこからグラデーションをプリントした紙なのかわかりません。なぜ、わざわざ判り難い置き方をするのか?この読者は、カッバーラの問題でも難しく考えて間違うタイプです。見る人に分かりやすいように、形や陰影を具体的に説明するのがデッサンなのです。自分だけで分かったつもりの自己満足ではダメなのです。

 今回のバラは、古い消しゴムを使ったために、分離した油分が水彩絵の具を撥ね退けてしまいます。それで苦肉の策として、小さな絵の具溜まりである点描を多用しました。点描は下地が見えるので、明るくて鮮度の高い色彩になります。日本画の岩絵の具で、粒子の粗い顔料を用いると、同じように下地が見えるので発色が良くなります。


古い消しゴムを使ったら、油分が分離して絵の具をはじく orz

 前回のバラは色が重くなりましたが、今回が点描だとすると絵の具を塗った感じです。水彩は、塗る感じではダメで、絵の具で描くか、絵の具を置く感じが良いのです。また、水彩の赤系は意外に暗く、モノトーンに変換すると真っ黒になります。下の絵は、プリントした時の誤作動で、赤が黒として出力されたものです。赤は明度が低いので、水彩に慣れないと黒っぽくなるのです。鉛筆の黒と相性が悪いのも当然です。



     エフライム工房 平御幸

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