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Channel: 平御幸(Miyuki.Taira)の鳥瞰図
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平御幸のデッサン講座〜第13回 リズム

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 以前に、予備校レベルでのセンスについて否定的な書き方をしました。経験で克服できるものを、センスという言葉を使って、最初から無いものと決め付ける指導者には気を付けたいものです。しかし、音楽に音感やリズム感が必要なように、絵画にも色感や造形感覚は必要です。問題は、訓練によって後天的に身に付けられるかどうかなのです。僕は、合理的で効率の良い、その訓練方法を説明しているわけです。

 さて、このような感性の一つにリズム感があります。絵画でのリズム感とは何か?それは、バランス感覚に近いものです。ミケランジェロのピエタで説明しましょう。デッサンにカラーで描きこんでいるものは、ミケランジェロが刻む時に重視した流れです。



 青は、ベールが流れ落ちるなどの垂直のリズムを表しています。ベージュは、首から上のムーヴメント(動き)の柱です。この斜めの力だけだと単調なので、それに交差する緑色のムーヴメントで顔の動きを強調しているのです。黄色は、鼻に焦点が来る構造を表しています。これはもう少し説明が必要です。

 石膏デッサンの前に、小さなスケッチブックでエスキース(esquisse)というスケッチをします。簡単なメモで、目鼻口は暗示程度です。この段階で構図や大まかな構想が出来上がるのですが、僕はエスキースで独特の表現をしていました。それは、石膏像の顔を、鼠小僧次郎吉の手ぬぐいで頬被りのように描くことです。マルスを見ていて閃いたのですが、人の顔というのは鼻に力が集まるのです。ミケランジェロの彫刻では、ブルータスがそのように意図されています。

 このように、ピエタの顔も鼻に力が集まるように彫刻されているのです。こめかみから眼球を一つの塊として見る。眉間から髪の生え際も一つとして見る。このような見方ができてくると、自然にムーヴメントは理解できてくるのです。

 しかし、実際に描く段になると、音楽のリズムのように木炭や鉛筆を走らせるのは大変です。僕は絵を描くときは音楽はかけません。シーンとしている方が集中力が高まるからです。だから、頭の中で音楽を思い出しながら、それにリズムを合わせて描いているのです。音楽が感じられるる絵には、必ずリズム的な構造が隠されています。それだけを抽出すると、ミロとかカンディンスキーのような作品になるのです。

     エフライム工房 平御幸

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