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Channel: 平御幸(Miyuki.Taira)の鳥瞰図
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工程管理の大切さ〜試みのミカエルの本質

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 先月末にスバル360開発秘話の動画をアップしましたが、コメント数を見ても分かるように反応はいまいち。前半は録画してなかったので途中からですが、それでもコミックを読めば、スバル360が物造り日本の精神そのものを具現化したものだと理解できます。おそらく、大半の読者には理解できていないのだと思います。

 日本では設計とデザインが別々のもののように感じられていますが、元々は同じDesignなのに、特に工学や建築的なデザインが設計と呼ばれるようになったのです。理系が設計、芸術系がデザインと勝手に分化したのです。芸大にも建築はありますが。

 このような誤解は料理についても言えます。ある人は料理は科学そのものと断言しています。酒やパン酵母の醗酵は生物学や工学だし、衛生管理だけでなく食材の加工や保管にも薬品が使われます。職人やシェフや主婦は、体験的に科学的最良を選択して料理しているわけです。

 料理で一番大切なのは手際。手際の悪い人の料理は不味いし、見た目も最悪です。手際の良い人は何をやってもリズムがいいし、リズムの悪い人は手際が悪い。実際の具材や調理器具を使わないで、ジェスチャーで料理をさせてみればセンスが分かります。センスの良い人はジェスチャーでも美味しそうに料理を作ります。すべての工程が頭の中に入っているからです。

 料理のレシピに首っ引きで作る人がいますが、それも間違い。レシピは頭の中に叩き込んで、完成までのイメージをシミュレーションしておけば手際が良くなります。読者のコメントなどを見ると、あらゆる分野でイメージする力が弱いと感じてしまいます。言葉を言葉としてしか捉えられず、それをイメージすることができていない。だから期待したような反応がほとんど返って来ません。

 人はIQが30違えば会話が成立しないと言われているそうですが、そういう問題ではなく、結局のところはイメージする能力の問題だと僕は思っています。スポーツではイメージトレーニングが大切と理解されるようになりましたが、スポーツ以外でも、イメージする力の強い人は、どの専門分野でも頭二つくらいリードするように思えるのです。逆に言うと、イメージする力の弱い人は何をやっても大成しない。

 これにはちゃんとした理由があるのです。イメージする力の強い人は、初めから終わりまでの全工程での難度をイメージできます。だから、最初は尻込みするくらいに見えますが、難度の高いプロセスを踏破できるイメージができれば最後までやり遂げることが出来るのです。

 それに対し、イメージする力の弱い人は、本当の難度がイメージ出来ないから、最初は軽く見て簡単に取っかかります。しかし、途中で挫折して逃げ出します。絵でも同じ。道具を揃えて最初の一月で挫折というパターンばかり。難しさが理解できていないから自分にも出来ると思い、その現実とのギャップに逃げ出すしかなくなるのです。

 スピーカー工作でも同じ。最初は下手でも何でもいいから一週間以内に完成させる。できれば3日で完成させる。出来が悪かったら反省文を山ほど書いて再チャレンジ。その繰り返しで上達するのです。それを、最初から馬鹿みたいに時間をかけてノロノロでは何ヶ月やっても完成しません。やっているポーズだけで自己満足。

 何事も工程=プロセス管理は基本で、試みのミカエルのパーツ作りでも、一つの接着に3分で工程が20だからトータルは1時間。鉛筆で線を引いたり、ドリルで穴開けするポイントを打ったりで30分。端子の穴開けからハンダ付けとネジ止めに30分。本組み立ては短時間に行わなくてはならないから、片方で1時間で合計2時間。底板の接着やバッフル加工に1時間。ユニットを取り付けてハンダ付けし、バッフルを取り付けて2時間。トータルで7時間しか要しません。乾燥時間を考慮しても2日で出来る計算です。

 このような工程管理が出来ない人は、料理でも食材を乾燥させたり腐らせたりするのでしょうか?スピーカー作りは特殊なものではなく、料理と同じ加工と完成までのプロセスがあるだけです。これが理解できない人はいないと思います。

 勘違いしている人もいますが、試みのミカエルは、作る人の霊格を試みるスピーカーです。だから、生命の樹の下の方にいる人は作ろうともせず、上の方にいる人は何度でも作ります。作る度に上達して、人間として階段をひとつ登ったのが自覚できるからです。何かと理由をつけてノロノロ作業をする人は、今の所に留まっていたいという、成長拒否症候群なのです。別名、サタンのナルシシズムが心地よい症候群。

 試みのミカエルをなかなか作れない人は、頭から冷水を浴びてシャキッとして作業をすれば甘さがなくなります。自分の神殿を作っている自覚があれば、どんなダメ人間でも完成させようとするでしょう。出来が悪くても、それが現段階の自分そのものなのだから、反省材料にすればよし。ダメ人間は、鏡となる試みのミカエルによって自分を知るのです。

 自分のダメさ加減を自覚する人だけが階段を登ろうとする。みんな欠点と向い合って、逃げないで階段を上るから、必死になって登っている内に神の宮が近くなっているのです。そして、最終的には設計できるようになって半人前。設計したものが証や徴(しるし)を持つようになって一人前です。まずは作ることから。

    エフライム工房 平御幸

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